日本にもキャッシュレス社会が来るのか
日本はまだまだ世界の他の先進国に比べると、現金でのやりとりが多くキャッシュレス化はいま進んでいるという状態です。
最もキャッシュレス化が進んでいるスウェーデンではGDP(国内総生産)に占める割合が1.3%に過ぎないのに対して、日本では100兆円を超える現金の流通に対して20%とキャッシュレス化で遅れをとっている現状です。
世界の先進国では、ほとんどの国は10%を下回っていることが多く、インドは10%、アジアでも韓国が6%と日本は先進国の中でも群を抜いて高いことがわかります。
ですが、日本でも多くのものがキャッシュレス化されているのも事実です。
・住宅ローンや家賃
・携帯代やクレジットカードの支払
・光熱費の支払い
・給与の受け取りや年金の受取
少なくともこういった金銭のやり取りに銀行振り込みや引き落としを利用されている方は多いです。
こういった現金での支払いや受け取りを行わないものもキャッシュレスといえます。
実際は多くのものがキャッシュレス化されており、私たちはあまり意識せずキャッシュレスでのやりとりを日々行っているのです。
では、世界の先進国に対して日本が遅れているキャッシュレス化とはなんでしょうか?
それは、普段のお店などでの買い物などで、支払いを現金以外のデジタル的な方法で行うというものです。
キャッシュレス化が進むとどうなる?
日本のキャッシュレスの歴史は決して他の先進国と比べてスタートが遅いものではありませんでした。
電子マネーのカードやインターネットバンク、携帯電話を使用した支払方法などは世界でも最も早く実用化しました。
ですが、日本ではなかなかそれらのキャッシュレス化が普及しなく、他の先進国に追い抜かれてしまっているのが現状です。
技術は素晴らしいものであっても、普及せず利用者が増えなければ意味がありません。
今後は更に利用者や小売店などの技術を使う側のことを意識して製品開発を進めていく必要が求められます。
キャッシュレス化が進むということは、サービスを受けたり物を購入するという行動と支払が対になっているということから、利用者の行動がデジタル化されていくということと同じことと言えます。
私たち利用者がキャッシュレスの利便性に気づき普及が更に進めば、より私たちのデータはデジタル化が進むことになるでしょう。
私たちのデータがよりデジタル化された未来では、例えばレストランに入店時には顧客のアレルギー情報や好みの情報により提示されるメニューが変わるというサービスが始まるかもしれません。
更には支払時には、生体情報で本人確認が取れれば財布もスマートフォンもカードすら必要なくなるかもしれません。
旅行先では、ホテルが顧客のデータを取得していれば、服のサイズなどを把握して着替えを用意してくれているかも知れません。
そうすれば、利用者は手ぶらで移動することが可能になります。
中国では2018年10月に静脈と顔情報を組み合わせて行う高度な生体認証技術も開発されており、現在は無人コンビニ「TakeGo」で実際に手のひらの静脈認証での支払いが既に可能となっています。
キャッシュレス化が進むと、教育の場においても変化が求められます。
私たちはキャッシュレス化が進むにつれ、現金で支払っていた時よりも意識せず支払を済ませるようになる恐れがあります。
ですので、子供の時からお金の管理などの金融教育がこれまで以上に必要となっていきます。
子供だけでなく、大人になってからも必要となる知識は異なっていくため、金融教育は必要です。
ですので、教育開発や研究は今も取り組まれています。
キャッシュレス化で広がるビジネス
キャッシュレス化が進むと新しいビジネスが生まれるチャンスでもあります。
実際様々なビジネスがキャッシュレス化によって登場しており、そのビジネスチャンスの広がりは大いに期待されているものとなっています。
キャッシュレス化が進むと、私たちのデータはデジタル化されていくとご説明しましたが、例えば私たちが物を購入した購入履歴などもその一つです。
・週末に雨が降ると売れ行きが上がる商品
・気温が28度を超えると売れ出すドリンク
・この地域では何時から何時の間にどのような商品が売れる
利用者のデジタル化されたデートを元にこのような事柄を小売店が把握できれば、より効率的な商品管理を小売店は行うことが出来るようになります。
個人情報の漏えいなどを心配する声もありますが、今のところでは性別や年代と地域の判別に留まっており個人を特定できるような情報は把握されていないようです。
最近では、飲食店のテーブルには注文と支払を同時に行えるタブレットが置かれているところも増えて来ています。
更に海外の支払サービスにも対応しており、外国語にも対応しています。
キャッシュレス化が進むと、データの管理が容易になり売上計算などの負担を軽減できるメリットが小売店にはあります。
その分の人員を接客に充てるなど、お店側はより良い店づくりに時間がさけると言うことです。
ですが一方では、キャッシュレス化によりお金を使いすぎるという問題も考えなくてはなりません。
実際に韓国では、キャッシュレス化が進み2000年代にクレジットカード払いが増えましたが、その頃から自己破産をする人が急増しました。
この問題は韓国だけでは無く、その他の国も当てはまり、実際にクレジットカード払いの増加とともに債務が増えていきました。
そういった問題に歯止めをかけるべく、様々なサービスも同時に登場しています。
子供がキャッシュレスで支払いをすると親に通知が行くサービスなどはデンマークで既に導入されています。
家族全員でサービスを利用すれば、家計簿代わりになりますし使いすぎも家族同士で把握することで歯止めを効かせることができます。
日本では、キャッシュバックやポイント付与でのシェア争いがキャッシュレス事業者間で行われていますが、その分どのような利便性をどの程度の安全性で私たちにもたらしてくれるのか、という提案が少ないように感じます。
キャッシュレス化によって解決する社会問題
キャッシュレス化の普及は、単純に支払い方法が便利になるだけでなく社会問題を解決してくれる可能性を秘めています。
様々なサービスとキャッシュレスを組み合わせることによって、より私たちの暮らしを豊かにしてくれる可能性があります。
例えば、医療の分野とキャッシュレス化の組み合わせは今後が期待されている分野です。
例えば、糖尿病の患者の体内に血糖値を監視するチップを埋め込みます。
そのチップが、食事時間やインスリンを必要とする時間をチップが管理して病院にリアルタイムで報告をします。
データを受け取った病院や薬局は、必要なインシュリンや処方箋をドローンなどで本人に送り届けます。
チップが自動で支払いを済ませ、その支払情報は利用者のお金を管理するサービス業者に通知されます。
糖尿病だけでなく、長期の治療期間が必要なその他の病気にも利用することが可能です。
一連のシステムが実現することが出来れば、糖尿病患者などは通院する必要がなくなり、チップが体調の急激な変化にも気づいてくれるためリスクも軽減できます。
更には病院側も定期通院の患者が減ることにより、より多くの診断を必要とする患者の受け入れや、一人の患者に対してより時間をかけることが可能となります。
データは医療費の支払いだけでなく、確定申告の還付金請求などにも利用できるので更に私たちの時間は他のことに充てられるようになっていきます。
医療分野以外にも、デジタル資産の管理や電力の売買、遠隔地での買い物支援など様々な分野で注目されています。
ですが、キャッシュレス化と他分野との新しい技術が発展し実用するためには、法改正などの法整備が必要なものとなります。
日本政府がキャッシュレス化を進める理由
日本政府は、キャッシュレス化が進むことによって様々な新しいビジネスが登場すると考えています。
現在日本ではキャッシュレス決済比率が20%ほどですが、2025年までに40%に高めるために様々な政策を打ち出しています。
新しいビジネスが誕生するのは正しいと言えますが、他にも目的があります。
現在日本には100兆円以上の現金が流通していますが、そのうちの90兆円が1万円札で保有されています。
その中には、政府に資産を把握されないために家に現金でへそくりとして保有されているものもかなりあると考えられています。
日本で消費される金額は300兆円と言われていますが、その内の現金支払い率を20%だとすると、必要な現金は60兆円で済みます。
その中でも1万円札は数回同じものが使用されることを考慮すると、50兆円を超える現金が資産として保有されていると考えられます。
つまりキャッシュレス化によって現金が使えなくなれば、国が把握出来ていなかった隠された資産を炙り出すことが出来るという事です。
韓国では、クレジットカード払いをすると20%も所得控除を受けることが出来ますが、これは小売店の脱税を防ぐ効果を考えたものです。
北欧などでも、盗難などの犯罪がキャッシュレス化によって抑制されるなどの効果がありました。
キャッシュレス化でコストが削減できる
現金を利用するためには、二つのコストが発生します。
1 環境コスト
2 社会コスト
環境コストとは、言い換えれば環境負荷のこととなります。
現金を作るには大量の紙と薬品と金属を必要になります。
それだけでなく、現金を輸送するためにはガソリンを使用することになりCO2を排出することになります。
仮にキャッシュレス化が進んだとしても、電気などのエネルギーは必要とするため完全に環境コストをゼロにすることは困難ですが、現金の時よりも多くの環境負荷を無くすことが可能です。
社会的コストとは、様々なことにかかる費用の事です。
現金の運送には費用がかかり、更には運送時の保険代なども実際はかかっています。
その他にも、両替や現金の洗浄、真贋鑑定など様々な費用が現金の維持にかかっています。
これらのコストは国によっても違いますが、日本では銀行が負担してくれています。
そのため私たちは多くの場合手数料なしで現金の引き出しなどが出来るのです。
海外の多くは、利用者や小売店にコストを負担させることが多く、ATMなどでの引出は手数料が必要になることがほとんどです。
この社会的コストを削減することが可能になれば、浮いたコストで様々なサービスの開発に充てる費用を生み出すことが可能になります。
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